事業を経営していると借り入れが日問うような時があります。よく理解しないと毒にも薬にもなります。
特に運転資金の借入は悪い薬になりやすいです。
健全な借り入れではなく、一時凌ぎで借りることに慣れてしまうと借入(お金)に対して麻痺してきます。
精神的にも楽になるので経営者にとってはまさに麻薬です。
創業時にすでに借入をしている起業家も多いことでしょうが、事業の拡大でも事業の立て直しであっても借入が必要な場面があります。
いま申し込もうとしている借入は本当に必要なんでしょうか?
借り入れを起こす前に、借りる資金の行き先と今後の事業で捻出できる返済についてしっかり確認してくださいね。
運転資金と設備資金の違い
まずは運転資金と設備資金の性質の違いを理解しましょう。
事業発展に向けた健全な借入は潤滑油となって多大な貢献をしてくれます。
返済期間にもしっかり目を向けましょうね。
運転資金とは
ランニングコスト
運転資金(ランニングコスト)とは、事業を継続するための維持費用です。
簡単にいうと経営で毎月必要になる経費のことです。
これが不足するということは事業として成り立っていないことが多いです。
運転資金の種類
運転資金の代表的な種類を挙げますね
- 入金のタイムラグによる「つなぎの資金」
- 借り入れをまとめて利息を軽減する「まとめ資金」
- 業績が季節によって変動が大きい業種の「季節性資金」
- 事業拡大に伴い毎月の維持費増による「増加運転資金」
- 事業の不振により必要となる「運転資金」
事業不振による運転資金以外は何の問題もありませんので、金融機関と事前に打ち合わせを重ねて円滑に融資を受けてくださいね。
返済期間
一般的に運転資金の返済は3年から5年のものが多いです。利益から賄えるように事業を改善する期間の目安ですね。
「つなぎ資金」や「季節性資金」はそのタイムラグに合わせて数ヶ月単位の融資が多いです。
設備資金とは
イニシャルコスト
設備資金(イニシャルコスト)とは事業を継続するための機械やシステムなどを購入する資金のことです。
ひとことで言えばインフラ(環境)整備の費用ですね。
事業をはじめるときの初期費用もイニシャルコストです。
性質としては、事業の発展とともに必要となってくる資金です。
設備資金のポイントは返済期間だけです
一般的な事業での設備資金の返済は7年から15年のものが多いです。
設備資金に関してはポイントは一つだけです。
事業用の車を購入するにしても、新店舗の立ち上げの費用にしても返済期間をいかに短く設定できるかです。
これがサラリーマンのマイホーム資金でしたら20何年返済とかありますが、事業にはそれだけリスクがあり経営者の収入ではなく事業の利益から払うものなので短くなっています。
例えば閉めることになった店舗分の返済をいつまでも抱えていると、次の展開に進みづらくなりますよね。
ですから、なるべく返済期間を短く設定するか、自己資金(貯蓄)をたくさん投入するかの二択になります。
短く設定するということはそれだけ利益が見込める事案かどうかということで、自己資金に関しては日頃からその事案に向けて準備をしてるかということです。
最初の設備資金の返済を短く設定できれば、その後の事業展開もとても楽になりますよ。
利益計算で間違えやすい
事業が赤字なのか黒字なのかというところで間違いやすい費用です。
イニシャルコストは事業の初期費用、設備などの購入資金なので普通の経費にはならず資産(会社の財産)になります。
しかし減価償却(何年かに分けて費用に計上する)資産なので、毎年その割合分を費用に計上しなければいけません。
健全な経営ができているかどうか見極めるときに、忘れがちなこの費用で利益が減ることになりますので注意してくださいね。
創業時の借入(開業資金)について
起業時の初期費用
事業をはじめる時に借りた資金は、設備資金も運転資金も混在していると思いますが、経理上は「開業資金」という名目の設備資金にあたります。
しかしこれは経理上の話なのであまり気に留めないでください。
実際はスタートからしばらくの運転資金が含まれていると思いますので、その資金が尽きる前に事業で利益を生んでお金が回るようになることに集中しましょう。
経営していく上で、パートナーとよべる金融機関がいると心強いです。
普段から経営相談を受けたり、試算表や事業計画書を定期的に出すことによって信頼関係も理解も深まります。
時には第三者の立場から経営のノウハウを手にすることもあるでしょう。
これを機会に定期的に金融機関を訪れるクセをつけてみてはいかがでしょうか。いざという時スムーズに進みやすいですよ。
運転資金をよく理解してください
安易な運転資金の借入は毒です
設備の購入資金などではない運転資金は対外的には使い道が不透明です。時には経営者自身がどこに消えていったのかわからないこともあるくらいです。
資金の行き先が決まっていないので、知らず知らずのうちに使い果たしてしまっているのです。
そしてまた借入の申し込みをする。
この悪循環に陥ると引き返せなります。いつか融資が下りない事態になって気付いても手遅れですからその前に解決しましょう。
返済財源について
毎月の経費が払えないから借り入れをするということは、今のままの経営だと先がないということです。
しかも翌月から借入の返済という資金流出も発生します。
しっかり打開策を練った上で必要な資金を申し込みましょう。
闇雲に申し込んでは絶対いけません。
打開策は二つです
打開策があれば、資金繰りが正常になるまでの資金を確保するのに借り入れを申し込んで改善しましょう。
尻つぼみになっている経営状態でしたら打開策は二つしかないです。
「事業内容の見直し」か「事業形態の見直し」です。
事業内容は在庫や人員、社長経費、原価や事業規模の見直しなどできることは結構あります。
試算して立て直せそうでしたら、その整理がつくまでの期間を融資でまかなってしっかり立て直すことです。
事業形態は、今の業種では今後も改善が見込めないときに取る手段ですがハードルは高いです。
通常は確実な売上が見込めない限り融資も厳しいでしょうね。
しかし、コロナ禍の今でしたら可能です。
事業の実態のない分野での立て直しは茨の道になることは間違いないので、踏み出すかどうかはダメだった時の対処法まで考えて慎重に踏み出してくださいね。
返済期間の猶予処置もありますが、期間が経てば返済がやってくることを忘れないでください。
条件変更(リスケジュール)は最終手段です
借入の返済が追いつかず、毎月の返済額を下げて期間を伸ばしてもらうことを「条件変更」とか「リスケジュール」と呼びます。
これは本当の最終手段で、もし行うのであれば今後金融機関からの借入は見込めないと覚悟して行ってください。
その後の経営は全て自己資金、利益の中から回せる範疇で行うことになります。
末期患者になると自覚症状もないです
映画やドラマで見る変な薬の末期患者と一緒で、借入の末期患者になるとお金や借入に対する自覚症状もなくなりますよ。
設備資金で借りて運転資金に回すようなことになれば金融機関の信頼もゼロです。(決算書を見ればすぐわかることです)
起業はスモールビジネスで
起業をするのでしたら目標を達成するまで必死に頑張ってほしいです。
その目標がどれだけ大きくても、最初はスモールビジネスではじめてください。
万が一資金に困っても小さくはじめれば大きな変化は必要ありません。規模が大きければ大きいほど軌道修正も難しく身動きができなくなります。
欲しいものも今すぐどうしても必要なものでなければ、利益を積み重ねて貯金して現金で購入するクセをつけてください。
このクセは必ずビジネスが大きくなっても活きてきますから。
エアコン買うのに一年かかりました
余談ですが、独立した従業員のお店にエアコンがありませんでした。
飲食店なのにお客様には大変ご迷惑をおかけしました。
独立した時に「現金で買いなさい」と伝えたのですがお店にエアコンがついたのは翌年の夏でした 笑。
幸いなことにお客様も笑い話にしてくれました。
もう10年近く経ちますが、いまだにそのお店は無借金経営しています。
運転資金と設備資金の借入についてのまとめです
それでは今回の記事のまとめです
- 運転資金のさまざまな種類
- 設備資金は返済期間がポイントです
- 開業資金は実態は混在している
- 事業の打開策は二つしかない
- 起業はスモールビジネスで
運転資金と設備資金についてでしたが、苦境に立たされている経営者は分かっていても間違ってしまうものです。
起業家の皆さんにはスタートを切る位置を理想より下げてみるのはいかがでしょうか。