キッチンカーにおける二毛作ビジネス
キッチンカーデビューを迎えたら、しばらくはマイナーチェンジで忙しいです。
横のつながりも作りつつ、毎日SNSも更新して車の飾りも手をつけたい。おしぼり類など不足のものを揃えたり…。やる事たくさんです。「どこかで落ち着いた時にやろう」という考えは無駄だと気が付きます 笑。事業を始めたら思いつくことはいくらでも出てきますから。
あれこれやって進化しつつも、頭の片隅に入れておいて欲しい事をお伝えします。
キッチンカー販売の二毛作ビジネスとは?
令和のこの時代に「二毛作ビジネス」と聞いてもピンと来ませんよね 笑。年なのでいい例えがなくてすみません。二毛作ビジネスとは「商売を効率的に拡げる」「売上を作る手段を複数持つ」といったイメージです。
仕込み場所での二毛作ビジネスを頭に入れて進んでみてはいかがでしょう?本当は、その先のドミナント戦略までお伝えしたいです。まずは一歩一歩進化していきましょう。
仕込み場所で行える二毛作の形態は以下の通り。
- デリバリー販売(自社商品)
- デリバリー販売(ゴーストキッチン)
- テイクアウト販売
- ※仕出し弁当
ポイントはそれぞれの業態がお互い影響しあってこそ大きな成果が出ること。どんな事業も必ず変化が必要な時がきます。今すぐではなくても頭の片隅に覚えておいてくれたら幸いです。
※仕出し弁当は一人では難しいのでまた詳しく紹介します
二毛作ビジネスのメリット
キッチンカー販売を軸に二毛作ビジネスを行なった結果、どういったメリットとデメリットがあるのかを理解しておきましょうね。まずはメリットの方です。
- それぞれが影響し合って(相乗効果を上げて)利益が増加する
- 食材ロスを減らすことに繋がる
- 新メニュー開発がしやすくなり客単価アップにも繋がる
- 二つの業態を同じ時間で出来る
- お客様の反応をそれぞれの形態から知ることができる
- 他のキッチンカーとの差別化に繋がる
この他にキッチンカーの名前を覚えてもらえたり、一見さんの多い移動販売から常連さんが生まれる可能性もあります。
キッチンカー販売は週末イベントが大きな収益源です。平日はオフィス街やルートで廻れる施設の開拓を進めて欲しいですが、ここに二毛作ビジネスもプラスして収益増と効率化を計ります。
メニュー改良のスピードを上げることやお客様の反応を見て商品を見極めることで、大きなイベントのキッチンカー出店にも「外さない商品」「客単価を上げる商品」で必ず効果が出るはずです。
影響し合って(相乗効果を上げて)利益が増加する
二毛作ビジネスが上手く機能しているかどうかは、それぞれがどれだけ影響し合っているかです。以下に上げる食材ロス軽減やメニューへの影響・お客様へのプラス効果などは、実際に行っていくとどれだけ影響し合っているか肌で感じられます。
キッチンカー販売とその他の販売ツールを常にリンクさせる意識を持ちましょう。
食材ロスを減らすことに繋がる
食材ロスが減ることの大前提は、同じ食材を複数のメニューに使用することです。
出店前の予想より売れなくて食材を廃棄してしまうこともあります。特に生鮮食品や冷凍の効かない食材ではよくあることです。残してしまった食材をキッチンカー販売終了後の仕込み場所でのテイクアウト、デリバリーで少しでも販売出来て消化できるのは大きいです。
売上が不透明な出店先の場合は、「売り切れ御免」の量しか持たずに出店するのもテクニックですが、逆に販売が好調で大きな販売機会ロスを起こす可能性もあります。その他の販売ツールで消化が見込めれば、持参する販売量も以前ほど慎重でなくても済むことがあります。
食材を違うメニュー(または同じメニュー)で共有しているから起きることなので、キッチンカーもデリバリーも食材はリンクさせましょう。食材を廃棄するのはお金を捨てていることと同じですからね。
新メニュー開発がしやすくなり客単価アップにも繋がる
デリバリーやテイクアウトで新商品を先行販売し、「お客様の反応がいい」「よく売れる」場合はキッチンカーの新メニューとして採用しましょう。
デリバリーはお客様からの評価がつきますし、テイクアウトはリピートがあるかという点で判断できます。実際に受け渡しの接客でお客様に商品の感想を尋ねることも可能です。こうしたフィードバックはなかなかキッチンカー販売の現場では掴めないので貴重です。
キッチンカー販売の現場では売れ行きはイベント集客に依る部分が大きく、お客様に満足頂いたかどうかまでは掴めません。
事前に評価の高いメニューがわかりキッチンカーメニューに反映させれば、いい評判にも繋がります。
二つの業態を同じ時間で出来る
キッチンカー販売は、仕込みも洗い物や後片付けまであります。販売以外の時間でテイクアウトやデリバリーを行ないましょう。出来れば事務作業も仕込み場所で行えば、二毛作販売の時間も増えますのでなるべく仕事を仕込み場所に詰め込むことがオススメです。
黙々と行う仕込みや片付けの時間を利用して二毛作販売を行うのは、体力的に大きな負担にはなりませんので。
お客様の反応をそれぞれの形態から得られる
ちょっと興味深いことですが、テイクアウト・デリバリーとキッチンカーで同じ商品を扱っても全然売れ行きが違う商品が出てきます。
デリバリー・テイクアウトの場合は商品が主役で、イベントなどのキッチンカーでは商品が脇役なのです。ランチや夕食目的で購入する場合がデリバリーなどで、イベント楽しみながらついでにっていう位置付けがキッチンカーでの購入ということです。
単価も500円から1,000円が圧倒的なのがキッチンカー販売で、デリバリーの場合は3割から5割増です。これはデリバリー手数料が掛かるので割高になってしまうのですが、それでも主食という位置付けから購入されます。
キッチンカー販売ではサイドメニューは単品で出ることが多いですが、デリバリーではサイドメニューはセットでよく売れます。「食事を摂る」目的ですからね。
お客様のニーズが違うので色々気づくことも多いですよ。
売れ筋商品は被っていることが多いですが、出店場所などでは全く違う結果が出ることもあります。特殊な売れ方をする場合は次回のためにデータをとっておきましょう。
他のキッチンカーとの差別化に繋がる
キッチンカーの存在からテイクアウト・デリバリーにつながることもありますし、その逆もあります。神出鬼没のキッチンカーでは商品を気に入って頂いても、出店場所まで調べて足を運んでくれるリピーターさんは多くありません。
「また見かけたから買いにきたよ」というお客様が多いですね。その点テイクアウトなどのサービスがあると、気に入っていただいたお客様はリピートしやすいので利用してくれるでしょう。
この双方向からの認知の広がり方は他のキッチンカーとの差別化に繋がります。
二毛作販売は以上のようなメリットがあります。お客様の購買状況は時間帯や季節、販売地域など分析しようと思えばたくさん出てきます。データの取得もスピードアップしますので販売に活かしていきましょう。
二毛作ビジネスのデメリット
複数の販売先を持つのは簡単なことではないですね。キチンといい影響を及ぼすような仕組みを作らなければいけません。
- メニュー開発で食材の種類を増やし過ぎる(ロスが増える)
- 人材や機材にコストをかけ過ぎると負担が増える
- 時間帯を決めずにやってお客様に迷惑をかける
どちらかの足を引っ張るような悪い影響が出るようでは本末転倒です。どちらも深く知ることが何より大切です。片手間な気持ちでいると上手くいかないものです。
食材ロスが増えるパターン
メニュー・サイドメニュー開発を進めていく中で新しく扱う食材が必ず出てきます。扱う食材が増えるともちろん食材ロスが増えるので、今までと同じ食材を利用した別メニューがベストです。
しかし実際はそう上手くいきません。
悪循環に陥らない為には二つルールを設けてみてはいかがでしょう。
- 冷凍保存が効く食材を優先する
- 保存期間が短い場合は必ず複数取り扱いメニューを作る
例えばテイクアウトのお弁当で新たに卵焼きを仕入れるとします。キッチンカーメニューで使用していなければ、卵焼き使用のサイドメニューを開発します。サイドメニューにも使用しずらければ卵焼き使用の弁当を複数用意する、若しくは卵焼きに代わる食材を選定し直す。
ゴーストキッチンに限っては商品としてパッケージ化されていますので、食材ロスを考える必要はありません。ゴーストキッチンでどのメニューを扱うかも、全くジャンルの違うものは扱わずに好調な商品はキッチンカーでも販売出来る商品がいいでしょう。
ゴーストキッチンの売上は別物と考えるのもありですが、出来れば好調な商品は逆に今度はキッチンカーでさらに販売を伸ばすといった相乗効果が見込めるものが好ましいです。
人材や機材にコストをかけ過ぎると負担が増える
雇用は最初は考えずに自分で出来る範疇から始めてください。
どれくらいの利益が出るかわからない段階で雇用はやめておきましょう。いつか事業規模が大きくなると新しい従業員を先行投資で雇えるようになりますが、最初は一人で行いましょう。
什器備品も同じで、先に購入やリースをしてしまうと持て余す結果となることがよくあります。通販の商品で失敗した時に似てますね 笑。こちらも最初はどうしても必要になった時、購入した方が安上がりだと確定してからにしましょう。
事業における買い物の癖っていうのはつくものです。
商売で使うからとむやみやたらと正当化して買ってしまいがちです。
何事も最初が肝心なので、ギリギリまで我慢しましょう。
お客様に迷惑をかける
一番起こりやすいデメリットはお客様に知らず知らず迷惑をかけてしまうこと。
テイクアウトを利用するお客様はリピーターになってくれることも多いです。キッチンカーの出店場所によって、片付けに戻る時間もまちまちになりますので、テイクアウトで購入を考えてくれていたお客様が訪れてしまっているということがあります。
訪れてくれたお客様に気が付かないこともありますので、事前に最低でも一週間、出来れば1ヶ月のスケジュールを受け渡し口や窓・外壁に張り出して告知しましょう。
仕込み場所で二毛作販売を行い、お客様とも距離が短くなるメリットが生まれたのに、かえって不信感を生んだり迷惑をかけてしまうことは絶対避けなければいけません。
昭和なタイトルの記事になっていますが、引き続き二毛作ビジネスについてです 笑。本当はキッチンカーから実店舗経営、ドミナント戦略まで紹介していきたいのですが、以前も書いた通り店舗経営は簡単ではないので二毛作販売を紹介しています。
実際の店舗を運営している飲食店でもこうした動きはあって、店舗の休業日を違う形態で営業したり、夜の遅い時間の営業形態を変えたりしています。これは今回の中身とは若干違って、賃貸している店舗をなるべくフル稼働させるのが目的です。固定費の負担を分散させるのが目的。これはこれで難しさがあって違う形態で行う場合は必要な備品が違ったり、扱う商品が全く別物でノウハウを学ぶ必要があったりします。
キッチンカーの仕込み場所を有効利用するのも固定費(家賃)の分散につながるのですが、飲食店の場合は家賃だけでなく優秀な人材を確保するためだったりもう少し複雑な事情が絡んでいます。
飲食業界だけではありませんが、既存スタイルからの変化の時です。
デリバリー販売の導入とSEO
コロナ禍前の2019年のデリバリーサービスの市場需要は4,172億円、2022年は6,303億円と1,5倍の伸び率です。コロナが少し落ち着きそうな2023年ですが、市場予測で6,821億円とさらに拡大する予測が出ています。
こうしたUberEats、Wolt、出前館などのデリバリーサービスを導入する時は、手数料が高いので価格の設定で頭を悩ませるかも知れません。また、サービス導入にあたって問い合わせから導入まで思ったより時間が掛かります。電話回線の利用も時間が掛かります。
スムーズに始められるように準備から導入までの流れを追っていきましょう。
サービス導入までの期間
テイクアウト販売は、仕込み場所の営業許可があればすぐにでも行えます。厨房とホール(お客様側)が区切られていれば問題ないので、小窓からの受け渡しでも簡易的なレジカウンターを置いて受け渡してもOKです。
テイクアウトで気をつけたいのが電話回線を引くときは時間が掛かるということ。携帯電話やLINEなどで事前に連絡をくれるお客様もいますが、電話をくれるお客様も多いです。電話回線を引く予定があればなるべく早く申し込みしましょう。混み具合にもよりますが、1ヶ月近くかかります。
デリバリーサービスも1ヶ月ほど掛かります。UberEats、Wolt、出前館などのデリバリーサービスにお問い合わせをして、契約書のやり取りから商品情報・写真のアップ、審査を経て開店になります。
この間1ヶ月ほどですが2ヶ月かかったという経営者もいました。導入を決めたらなるべく早く取り掛かった方がいいです。これからキッチンカー開業で仕込み場所も確保するのであれば、申し込みは先に終わらせておきましょう。担当者が来る地域もあれば、web上やメールのやり取りの場合もあります。
操作方法はそれぞれ若干違いますがすぐ慣れるはずです。
デリバリー販売で大切なSEO
実際に始まってからの注意点は
- 配達員に伝える商品の受け渡し時間に遅れないこと
- お客様のレビューはすぐ返すこと
- 新商品を月に一度出すこと
デリバリーサービスのSEO(店舗や商品が上位に出てくるシステム)は、こうした点も加点・減点があります。最初は新規店舗として売れますが、売り上げが落ちてくる原因はSEOが効いてない事が大きいです。
また、当社では各店行なっているのですが手書きのサンキューレターを添えましょう。リピート率がグッと上がります。また店舗評価も高くなる要因です。
お客様が不満に感じるポイント
デリバリー販売で一番お客様が不満に感じるポイントは「料理以外に費用がかかる」。これはシステム上の問題なので店舗側ではどうしようもありませんが、不満に感じる点の2位から5位までは店舗側の対応です。
- 料理代金以外に費用がかかる
- 到着時刻が遅れる事がある
- 料理が冷めている
- 注文から到着まで遅い
- 料理が崩れている
以上の点に不満を感じているお客様が多いので、逆にいえばしっかり意識して対応できれば他のお店よりも評価が高まりSEO順位も上がるはずです。調理時間が重なった場合の順序に気をつけたり、冷めない容器や隙間が開いて崩れやすい容器を避けるなどの工夫をしましょう。
間違えやすい価格の設定
ほとんどのデリバリーサービスは手数料が35%です。店舗側からすると価格設定をどうするか非常に頭を悩ませるところです。ここでお客様目線の負担を考えてみると。
- 容器代が上乗せされている
- 手数料35%上乗せされている
- 配送手数料が別途かかる
- サービス利用料が別途かかる
- 最低注文手数料が別途かかる
購入には上記の負担がお客様に生じます。お客様のメリットといえば、外食での税率10%が8%で済むということだけです。今さらながらかなりの割高感がありますね。
キッチンカー販売でお客様負担を軽減できるのは、最初から容器代込みで価格設定しているので容器代の上乗せはないこと。
しかし、サービス利用料35%は大きいので上乗せは行うでしょう。店舗により上乗せの割合はまちまちですが、この時の計算で間違わないように気をつけましょう。
仮にメニューが税込(8%)で1,000円として手数料分そのまま上乗せして、お店としては1,000円の売上金が欲しい場合。1,000円の35%だと思って350円上乗せの1,350円に設定するのは間違いです。原価計算で気づくと思いますが、1,350円の35%で472円になります。さらに472円に10%消費税が掛かります。つまり1,350円の手数料は519円です。お店の入金は831円となります。
ちょっとややこしくなりましたが、販売価格の38,5%引かれて入ってきます。
価格設定の際には気をつけてくださいね。
前回の記事で、安易に実店舗を持つことの危険性について書きました。キッチンカーから次の展開で「実店舗立ち上げ」そして「閉店」。このサイクルの早さは準備不足。もしくは知識不足。引き続きのような記事になりますが、実店舗ではなくもう少し簡単な二毛作の立ち上げ方です。
いつか変化を求められた時に思い出してくれる一つの案になればと思います。