キッチンカー開業までの手順
「キッチンカーを始めたいけど何から準備したらいいかわからない」という方へ、開業準備の手順をお伝します。
同時進行でやれることも多いので、順序を理解して効率よく準備を整えましょう。
大まかな流れは下記の通り。
- メニュー決めて収支計算する
- 開業資金を調達する
- 補助金の申請をする
- 車両を注文する
- 販促品・備品を調達する
- 出店場所を確保する
- 保健所の営業許可を取得する
- 営業開始!
準備が終わった項目はチェックしてどんどん進めていきましょう。
キッチンカー開業手順:メニュー決めて収支計算する
一番最初に取り掛かるのはメニューです。メニューが決まらないと何も決まっていきません。(注意:先に車両を選んでしまわないようにしましょう)
メニューに関連する項目は下記の通り
- メインメニューを決める
- 試作をする
- パッケージを決める
- 原価計算をする
- 売価を決める
- プラスワンを決める
- サイドメニューを決める
- 収支予想をする
一つ一つ補足します。
メインメニューを決める
最初に迷いに迷うのがメインメニューでしょう。
既存店を持たない開業の場合は特にそうです。選択肢が無数にありますからね。
メニュー選びの基準で思い浮かぶのは3つでしょう。
- 儲かるメニュー
- 人気のあるメニュー
- 自信のあるメニュー
儲かるメニューは利益率の高いメニューですね。粉物やドリンクなどが代表的でしょう。
単価が安いものが多いので、売上金額を作るのに苦労しないかも考えましょう。
「繁盛する飲食店には目玉商品が三つある」というのは飲食業界の通説です。
キッチンカー開業では最初からそこまで意識する必要ないかもしれませんが、頭の片隅に覚えておいてください。一つはしっかり看板メニューとして確立しましょうね。
人気のあるメニューは色々なサイトで紹介されていますが、だいたい似ているようです。
こちらで取り上げていますので参考にしてみてください。↓
メニューを決めるのに自信のあるメニューというパターンもあります。
身近では「以前に専門店で働いていた経験がある」とか、「特別な食材の仕入ルートがある」なんてパターンが多いです。
それと開業に向けて短期間でも修行して覚えたオーナーさんも多いですね。
開業後一番ブレないのは最後に紹介した「短期間でも修行した」パターンです。
少なからず経験があると、メニューと相性のいいサイドメニューやアレンジなども覚えていることもあります。修行先と良好な関係でしたらその後のアドバイスもいただけるでしょう。また、仕入先にどんな食材があるかも頭に入っていて膨らみやすい側面もあります。
メニューが決まらないと何も前に進まないので、後で変更しても構いませんから仮にでも決めてみましょう。
試作段階や原価計算で「スタートに戻る」ということがあっても、着実に前に進みますから。
それともう一つ注意点は、開業するなら通年販売も意識してください。詳しくは以前の記事で紹介しています。↓
試作をする・パッケージを決める
メニューが決まったら試作です。
いきなり個性を出すのは難しいと思いますので、まずは基本を身につけましょう。
パッケージについては、とにかく種類が多くメーカーも多いです。
お住まいの地域の業務用専門店からパンフレットを借りたり頂いたりするのがオススメです。ネットでどこかのお店に辿り着いても取扱メーカーが少ない場合があります。
また、業務用包装資材の方は業界の情報もたくさん持っていますので、担当者と仲良くなれば耳寄りな情報も手に入ることがありますよ。
以前の記事で基本的な部分とパッケージについて説明していますので参考までにどうぞ。↓
原価計算をする
商品の原価率はすごく重要なポイントです。
原価に含める項目は人それぞれですが、当社の場合は包装資材も入れてます。
理由は販売に比例して増減する費用だからです。
なかには原価に光熱費も含めて計算するケースもありますが、正確に組み入れるのは難しいので当社では光熱費は参入していません。
食材の表を作って、一食あたりに使用する単価を一円単位まで出して計算しましょう。
原価表は一度作ってしまえば、サイドメニューを追加した時も原価表から同じ食材があればすぐに探せせます。食材は価格は変動が激しいので定期的に入力し直すようにしましょう。
包装資材を入れる時はパッケージの他に「箸(スプーン)」「箸袋」「紙おしぼり」「アルミカップ」「お持ち帰り袋」なども忘れずに入れましょう。
お客様に商品と一緒にお渡しするものは全て入れてくださいね。
原価計算には出てこない食品ロスという問題もあります。いわゆる廃棄です。
出店時に持っていく商品を作り過ぎてしまったとか、仕入れていた食材が傷んでしまったなど。ロス率は出店を重ねれば減っていくはずです。冷凍保存の効く食材を扱うこともポイントです。
原価率はメニューによって違いますが30%が一つの基準でしょう。
30%を大きく超える場合は売価も含めて見直してみましょう。
キッチンカーに限らず原価表を円単位まできっちり管理しているところで潰れたお店は見かけたことがありません。とにかく癖をつけるためにも最初が肝心です。
「このくらい」っていう感覚がどんぶり勘定の始まりです。
困った時に見直す材料にもなるので、正確にきっちりつけましょうね。
売価を決める
売価の決め方は「お店の希望価格」と「お客様目線で決める」の双方の目線が必要です。
原価計算をしたら150円だったとします。原価を3割に設定したののなら売価は500円ですね。(150円÷30%)
これはあくまでもお店の希望価格ですから、今度はお客様目線で客観的に考えてみましょう。
商品が500円で適正かどうか。自分が買うならいくら位が妥当か。まわりの人に聞いてみることも大切です。シビアな人もいればそうでない人もいます。いろんな人の意見を聞いて参考にしましょう。
メニューは見た目が大切です。飲食店経営者には見た目7割りという人もいれば8割という人もいます。キッチンカーでは特にその傾向が強いです。インスタ映えする商品はお客様にとっては大きな魅力です。
盛り付けとパッケージが肝心ですが、商品化するまでなるべく多くの女子の意見を聞きましょう。見た目まで含めて商品の値段だと考えてください。
プラスワンを決める・サイドメニューを決める
商品の利益率が決まったら次に検討するのが客単価です。
商品購入を決めたお客様に、プラスワンでもう一品オススメしましょう。最初に購入を決めるまでのハードルよりもプラスワンは一気に難易度が下がります。一声かければ「じゃあこれも」とすんなり決まることが多いです。
プラスワン商品というのは、例えばトッピングであったり大盛りなど。
サイドメニューやセット商品もありです。
一番簡単なのはトッピング、大盛りなどのオプション設定です。500円の商品がオプションつけていくうちに1,000円になるなんてことはザラにありますよ。例えばカレーなら、辛さ増しでも大盛りでもトッピングでもいくらでも作れます。
格安の蕎麦やラーメン店で経験したことがありますよね?安いのが売りで行ったけど結局気がついたらそれなりの金額になっているってことはよくあることです。
サイドメニューも注文しやすいお手頃な商品を開発しましょう。ハンバーガーならフライドポテトやチキンが定番のように関連付いた商品で開発していきましょう。
必ず原価表から売価の確認して、単品なら若干高めに設定してセットならリーズナブルになるという設定がいいでしょう。この場合の利益率の設定はセット販売して安くなった方で設定してください。
収支予想をする
キッチンカー開業での代表的なメリットを少しおさらいしてみると。
- 少ない初期費用ではじめられる
- 毎月の固定費が安い
- オフィス街からイベント参加まで色んな場面で出店できる
- スケジュールを調整できる
- 人件費をかけずにはじめられる
などなど。
開業する魅力はたくさんありますが、キッチンカー販売の最大のメリットは毎月の固定費の低さです。
営業していてもしていなくても掛かる毎月の固定費がキッチンカーの場合だと
- 車両保険
- PL保険
- 駐車代
ほぼこれだけ。あとは出店回数に応じて
- ガソリン代
- 出店料
- 消耗品・衛生費(消毒液や手袋・ゴミ袋・ティッシュなど)
この先の費用は基本的に利益の中からなので、必要な経費は上記の費用でほぼ賄えます。(広告チラシを作ったりディスプレイの小物を購入したりは利益の中から)
収支を計算するのに一番不確実なのが「売上」です。
まずは上記の固定費を書き出してみましょう。
例えば、駐車代が10,000円で保険が合わせて25,000円だとします。最初は月に20日稼働が目標だとして、一回のガソリン代が平均2,000円で出店料が平均2,000円、消耗品は毎回1,000円掛かるとします。
費用項目 | 一月当たりの金額 | 詳細 |
車両保険・PL保険 | 25,000円 | 月額料金 |
駐車代 | 10,000円 | 月極料金 |
ガソリン代 | 40,000円 | 2,000円×20日 |
出店料 | 40,000円 | 2,000円×20日 |
消耗品・衛生費 | 20,000円 | 1,000円×20日 |
合計 | 135,000円 |
これに経費ではありませんが、仮に車両購入で300万円掛かったとしたら5年払いで利息込みで月額約55,000円、生活費で月に20万円は稼ぎたいとしたらそれも足して390,000円です。
原価は30%に設定しても、最初は5%ロスが出ると仮定して原価35%。つまり利益率65%ですね。
390,000円÷65%は、600,000円の売り上げが目標になります。
週末(土・日・祝日)の売上は平日の2倍で売り上げを計算します。
20日稼働のうち10日は週末だとしたら、平日の換算の30日分になります。
一回の稼働での売上目標は、600,000円÷30日で20,000円。
平日の目標が20,000円で週末の目標が40,000円となります。
客単価を1,000円で設定したら1日の販売目標は20食(週末40食)です。
かなりハードルは低いです。これで20万円の収入込みですから。
メニュー見直して一日20食販売できるイメージ湧いてきたでしょうか。
恐らくおそらく開業してみたらそんなに難しくないこと実感できるはずです。
稼いだ利益の中から機器を購入したり看板を追加したりしてさらに魅力的なキッチンカーにするのは賛成ですが、毎月の固定費が上がってしまうよな買い物は避けましょう。
リースで厨房機器を入れたりするのは慎重になって、なるべく一括で支払える費用を心掛けましょう。
キッチンカー開業手順:開業資金を調達する
メニューが決まったら続いては資金調達です。(自己資金で始める場合はスルーしてください)
メニューが決まれば提供できるキッチンカーのサイズも絞られます。見積もりを厨房機器を含めて取っておきましょう。キッチンカー製造を依頼するのであれば厨房機器購入と設置まで含めて一件で取れるはずです。
金融機関への融資申し込み
融資を打診する金融機関は、地域の信用金庫か日本政策金融公庫がオススメです。民間の金融機関は融資額が少額で特に創業者に向いているのは地域の生活が対象の信用金庫です。同じようなキッチンカー開業の案件もすでに実績あるはずですから話もスムーズに進むはずです。(融資対象の企業が大きくなればなるほど取引する金融機関も地方銀行から銀行、メガバンクへと移り変わります)
強力な保証人がつくとすぐに融資決定して実行になるでしょう。
実際は保証人を立てない場合がほとんどです。信用金庫でも政策金融公庫でもとにかく肝心なのは「事業計画書」です。
毎月(または毎年)の収支を記載するところがあります。上記の売り上げの超簡単なシミュレーションを基に自分なりにアレンジして提出して下さいね。収支以外に借入の返済金と自分の収入(生活費)も盛り込むのがポイントです。
借入金額は車両の見積金額が大部分を占めますが、営業に向けて必要な経費をざっと項目と金額を出して提出しましょう。
金融機関との取引の流れはこちらです。↓
自己資金で始めたり、販売店のカーローンを利用する分には難しいことはありません。リースやレンタルを利用するのも大きな資金が必要ないので同様です。
ただし、カーローンは利息が金融機関よりも高いので金融機関に打診した後でもいいでしょう。リースやレンタルはもっと割高です。いずれ購入することになりますから最初に金融機関から始めるべきですね。
補助金の申請をする
補助金は行政からの支援ですから必ず申請して受けましょう。キッチンカー開業で対象になるのは「ものづくり補助金」です。
各都道府県では独自に補助金を出しているケースもありますので、お住まいの都道府県ホームページを確認してみて下さい。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、製造業はもちろん飲食業界・医療業界などの幅広い業種に対応しています。とても利用されやすい補助金で、特徴は3ヶ月単位の応募で申請にあたって求められるのは計画性です。
補助金の紹介で「事業再構築補助金」と「小規模事業者持続化補助金」もよく取り上げられますが、前者は金額も大きく提出書類も莫大で、大きな事業を新たに構築する企業者向け。後者はすでに事業を行っている事業者向けです。(事業再構築補助金もキッチンカー開業で申請はできます)
これからキッチンカーを開業する人は「ものづくり補助金」を申請する資格者です。忘れずに申請をして事業のバックアップをしてらいましょう。
事業をはじめると雇用に関わることや新しい取り組みなどで、補助金や助成金の対象になることがあります。実は行政はさまざまなサポートをしています。
ただ、事業者が対象者だったのに補助金や助成金を知らずに申請しないで終わったということもよくあることです。
経営者同士でよくディスカッションしている事業者なら情報が入ってくることもありますが、これから開業という環境だと自分からアンテナを張っていないと補助金関係の情報には辿り着きません。
僕がよく情報を仕入れる先は以下のyoutubeチャンネルやサイトです。
ぜひ定期的に覗いてみて下さい。
ものづくり補助金申請から受給までの流れ
申請から受給までのスケジュールを見ていきましょう
- 事業計画申請書の提出
- 採択通知
- 交付申請
- 交付決定
- 補助事業実施・実績報告
- 確定検査
- 補助金請求・補助金受給
ここで注意しなければいけないのが、キッチンカーの購入は「交付決定後」になります。
事業が承認される前に購入してしまうと対象外になります。補助金や助成金は申請のタイミングを間違えて受給できないということがよくあるんです。気をつけましょう。
また、補助金の請求は実績報告を行った後となります。
補助金を当てにして事業を始めないようにしましょう。あくまでも支払いが終わった後に受給になりますので、支払い時に充当することはできません。資金繰りを計画する時には入れないでくださいね。
事業計画書は金融機関に提出したものを活用しましょう。
事業計画書提出後はスムーズに進みます。申請と決定の書類のやり取りになります。交付決定後は、キッチンカー購入費用の実績を報告し、細部を確認してもらったら補助金請求して受給を待ちましょう。
車両を注文する・備品を調達する・出店場所を確保する
ここからは同時進行で進めていきましょう。
資金の目処が立って補助金の申請も進めば、車両を注文し納車までの期間に、備品の調達から出店先の営業までやること満載です。実際に営業に向けて動いている実感も湧くはずです。小さなことでも思いついたら一つ一つ終わらせていきましょう。
書き出すことが大切です
やることがいっぱいで頭の中が混乱し出すのもこの頃です 笑。
ノートを一冊買うことをお勧めします。パソコンで家に帰って来て管理するよりも、あちこち動き回るのでいつも持ち歩いていた方が早くて間違いありません。
備品などの買い物と出店先の営業状況を把握します。
買い物を着実に進めていくコツは細かいものでもいいので全て書き出すことです。レジまわりの備品からフライパンや菜箸、ゴミ袋の果てまで。揃ったものからその場でマーカーで消していきましょう。
出店先への営業はスーパーや道の駅、児童施設など回ってみようと思うところを書き出して、結果や担当者の名前など自分が振り返ってすぐわかるようにまとめましょう。開業後はノートから卒業して出店予定のカレンダーを作成することもお勧めですよ。
こちらも参考にどうぞ↓
出店カレンダーはこちらから↓
車両の購入はこちらも参考にして下さい↓
保健所許可を取得する・営業開始!
保健所許可を取得していよいよデビューです!
最初は忙しいところへの出店が理想ですね。四苦八苦しても忙しい方が覚えることが多いです。どのくらいが基準かわからないでしょうから食材のロスも出てしまいます。接客のミスもあるでしょう。それでも「失敗した〜」っていう後悔がないとよくなっていかないものです。
たくさん経験積んで振り返った時に、あの頃はしょぼかったな〜といつも感じられれば成長している証です。
保健所許可と食品衛生責任者
車両が納車になる前に保健所とは打ち合わせを行なっておきましょう。購入先からボックス内の図面を送って貰えば事前に打ち合わせができます。
保健所許可の取り方はこちらです↓
食品衛生責任者の資格を持っていない場合は、受講する日取りを予約すればその間営業していても問題ありません。保健所に行った際に合わせて予約してしまいましょう。
デビュー前の宣伝
今回は開業までの流れを一気に紹介しようと思って書いているのですが、最後にSNSはデビュー前に始めてしまいましょう。キッチンカーの宣伝媒体はSNSが圧倒的に強力です。費用のかかる広告の営業もくるでしょうが、完全スルーで構いません。
デビューまでの四苦八苦する姿を配信するのも、観る側からしたらストーリー性があって楽しいはずです。デビュー前からファンができるかもしれませんよ。
内容はそれぞれの好みですが、SNSの告知はデビュー前に始めましょうね。
キッチンカー開業までの流れを過去の記事で補足しながら説明してみました。特に細かい説明をしたい箇所は一つの記事で説明していますので、気になるところは確認してみて下さい。
店舗での飲食店とキッチンカーと比べたらスタッフに怒られそうですが、キッチンカー販売で特に大切なのは女子力とアンテナの広さです。お客様との接点になる窓際のデコレーションも、キッチンカー全体のデザインも、SNSの文章や写真のセンス、インスタ映えする盛り付けの工夫などは女性の意見やセンスが光ります!
もう一つ特徴があって、成長中の業界では浅くても広いアンテナが必要です。あちこちで新たな動きや試みがあります。同業のオーナーさんとたくさん仲良くなって情報を共有し合うことが大切ですよ。